第24章 言葉足らず
バスを降り、マンションまでの道を歩く。
しかし、今日は真っ直ぐ佐久間さんのもとへ帰る気にはなれない。
…泣いてしまいそうな気がした。
確かに今朝までは佐久間さんを守るのは私の役目だと思っていた。
佐久間さんを支えるのは私であると。
私は神田美咲のようにはならない。
危機的状況に陥り、疲弊してしまっているであろう佐久間さんの手を…私は絶対に放したりはしない。
そう思っていたのに…
私は今、自分の事で泣いている。
来た道を引き返し、マンションとは逆方向へと向かう。
少し冷たい夜風にあたれば、涙など止まってくれるだろう。
どこか軽く飲めるお店にでも寄って、何か美味しい物でも食べれば、きっと心も晴れるだろう。
そう思ってはみるが…
私はいつもの焼き鳥屋で、愛美先生とモツ煮込みを食べながら笑い合いたい。