第24章 言葉足らず
職員室の前には愛美先生の姿があった。
私達が戻るのを待っていたのか、廊下を歩く私達の姿を見付けるなり、一瞬にして表情が曇る。
いつものような眩しい笑顔は無い。
私に対しての嫌悪…
そう見えてしまうのは愛美先生への罪悪感があるからだ。
「あの…」そう言いかけた私に、愛美先生は「本当なの?」と首をかしげた。
「はい。」と大きくうなずく私を見て、愛美先生の表情は曇りを増す。
「私の恋人は…佐久間さんです。」
「そう…。」
きっと、私の言葉は全て言い訳でしかないだろう。
うつむく愛美先生はひどく動揺していた。
事の経緯を…最初から話すべきだろう。
アパートの中庭で倒れている佐久間さんに出会った事。
美容師だと思い、関係を持った事。
佐久間さんがアイヴィーのギタリストであると知った時には…私達はすでに同棲をしていた事。
「愛美先生…」
「ごめん。聞きたくない。」
愛美先生はそう言い残すと、職員室へと入っていった。