第24章 言葉足らず
その時だった。
職員室の隣りにある会議室から、田辺先生が顔を出した。
まるで私が出勤するのを待ち構えていたかのよう。
「おはようございます。」
「橘先生、おはようございます。」
田辺先生は険しい表情を浮かべながら、辺りを見回した。
普段は温厚な田辺先生が見せたその表情に、噂話をしていた生徒達はクモの子を散らすようにいなくなってしまった。
「橘先生、話があります。」
「…何でしょうか?」
「説明して欲しいんです。
僕に…そして愛美先生にも。」
ここまで聞けば、もうあの話しかない。
the IVYのギタリストである佐久間俊二との関係…。
こんな形で知られてしまう事になるのなら、私の口からきちんと伝えるべきだった。
田辺先生は…私達の事をどこまで知っているのだろうか。
そして…それはどこから得た情報なのだろうか。