第23章 過去の女
ただ…
佐久間さんの心に寄り添っていたかった。
正直…佐久間さんの過去に嫉妬しないと言えば嘘になる。
私は佐久間さんの過去も現在も未来でさえも欲しいと思う。
欲張りな私の恋。
佐久間さんの手にそっと手を重ねた。
長い指先がわずかに反応する。
交わる視線に胸の奥がきつくきつく締め付けられる。
「…後悔しないで。」
どうか、過去の恋を…神田美咲との別れを、そして私との今を後悔して欲しくない。
「辛かったら…一緒に泣いてあげるから。」
柄にも無い言葉。
伏せたまつ毛が涙で濡れた。
まるで駄々をこねる子供のようだ。
それでも、これが今の私の精一杯だ。
「ありがとう。」
佐久間さんの温かい腕に包まれる。
鼻をくすぐるスパイシーな香り。
大きな背中にそっと腕を回す。
熱くなる耳たぶに、佐久間さんの柔らかな唇が触れた。
「後悔なんてしないよ。」