第2章 高校教師
「あなたは、どうして美容師になったんですか?」
「ん?」
「美容師になる事が“夢”だったんですか?」
「あぁ…、俺の話ね。」と、男は少し戸惑った表情を浮かべた。
「そうだなぁ…。」と腕を組み、考え込む。
変な事を聞いてしまっただろうか。
先に“仕事”の話をしてきたのは男の方だ。
触れられたくない話題…というわけではないだろう。
「俺さ、子供の頃に少年野球やってたんだよね。
プロ野球選手になるのが夢で。
見えないでしょ?」
「…そうですね。」
「中学生になって、もちろん野球部に入部したんだけどすぐに辞めちゃったんだ。」
「怪我…ですか?」
「俺より上手い奴がいて。ひねくれちゃった。」
「…え?」
「もうダメだぁ~ってなったの。
それで、そこから髪を伸ばし初めて…」
男は笑いながらそう話す。
あまりにも冗談じみた話。
「結構頭の形良くて坊主似合ってたんだよ。」と恥ずかしそうに話す男へ「ちょっと見てみたかったです。」と笑った。