第2章 高校教師
「あの…」
「先生ってさ面白いよね。」
沈黙が怖くなり、慌てた私の言葉をさえぎるように男はそう言った。
意味が分からず、目を白黒させる私の顔をじっと見つめながら男はふふっと笑う。
私の一体何が面白かったのだろうか。
つまらないと思われるよりは良かったが、“面白い”など私には無縁の言葉だ。
「先生の言ってる事、ちょっと分かるな。
必ず“正しい答え”が用意されていると“楽”だなとは思う。何事もね。
もしその国語のテストでマルを貰えていたら、先生の人生変わってたかもね。」
「なんてね。」と男は優しく微笑んだ。
この話をしたのは男が初めてだったが、こんな反応が返ってくるとは思ってもいなかった。
男は相変わらず美味しそうにご飯を頬張り続ける。
本当に不思議な人だ。
独特の空気感。
卑屈な私の胸の内さえも、男は笑って受け入れてくれる。
何て居心地が良いのだろう。
知りたい。
男の事をもっと知りたい。
そう思ってしまうのはおかしな事なのだろうか…。