第23章 過去の女
「一昨日の夜、思い切ってここへ来たの。
20年振りに。
“帰ってくれ”って言われた。
“大切な人と一緒に暮らしてる”
“恋人だから”って。
ファンにつけられてるって言ったら、部屋に入れてもらえたの。
そしたら“俺は出てくから”って。
俊二らしいでしょ?」
一昨日の夜…と言うと、私が北海道での最後の夜を過ごした日だ。
昨日の昼過ぎにこの部屋へと戻り、リビングでテレビのワイドショーを観る神田美咲と鉢合わせた。
私の留守中にかつての恋人が訪ねてくるなど、恐ろしさで身体が震えた。
私の留守を良い事に…佐久間さんと神田美咲は一夜を共にしたのだろうか…。
そんなおかしな妄想をし、傷付き、泣いてみたりもした。
佐久間さん本人には聞く事が出来なかったが、神田美咲がこの部屋で過ごしていた理由を知る事が出来て安心した。
佐久間さんはこの部屋で神田美咲と過ごす事はなかったようだ。