第23章 過去の女
ふと、“彼女”の言葉を思い出した。
小松加奈。
彼女が放課後の屋上で言っていた、あの言葉。
「“ぼっち”って惨めじゃない?」
“惨めさ”を感じるのは、一度でも光を浴びた事がある人間…そう思ったのを覚えている。
光をたくさん浴びた人間ほど、闇は深い。
思い詰め…もがき苦しむ佐久間さんの姿を想像し、胸がキリキリと痛んだ。
そんな佐久間さんに別れを告げるなど…私には理解出来ない。
「“落ち目のギタリスト”なんて私には釣り合わない。
あの時はそう思った。」
「…最低。」
「そうね。最低よね。」
そう力無く笑いながらうつむく顔は美しいと思う。
それでも、私は神田美咲の言動に驚くばかりだ。
テレビの画面を通した神田美咲は…凛とした強さと優しさに溢れた素敵な大人の女性だった。
しかし…それはほんの一部分。
いや、全てが演技。
神田美咲は、私が思っていたような女性ではなかったようだ。