第2章 高校教師
「数学は答えが1つしかないから、嫌いじゃなかったんです。」
「まぁ、確かにね。」
「小学生の頃、国語のテストで思い切りバツを付けられたんです。
一生懸命考えた答えに…主人公の気持ちを考えて、私なりの解釈で出した答えに。
ショックでした。
まるで自分の心を否定されたような…そんな気持ちになってしまったんです。
作品の解釈なんて人それぞれですし、時としてそれは作者の意図しないものである事もあります。
高校や大学入試ならまだしも、小学生のテストです。
多少のおおらかさがあっても良かったんじゃないのかなって今でも思います。
初めから答えなんてあってないようなものの“正しい答え”なんて、私には難しすぎました。
その点、数学は簡単でした。
必ず“正しい答え”が存在しますから。」
つまらない話をしてしまっただろうか。
男は「そっかぁ。」と言うと黙り込んでしまった。
ただ黙々と食事を続けるその顔に笑みはない。
せっかくの和やかな空気を台無しにしてしまったのだろう。
出会って二度目の相手にする話ではなかったかもしれない。