第22章 スクリーンの中で
「あなた、誰?」
「私は…。」
「こっちへ来て座ったら?」
「い…いえ。」
「さっきから顔が真っ赤。」
神田美咲はキッチンへ向かい、暖かいコーヒーをいれてくれた。
どこに何があるのかをきちんと把握しているような振る舞いだ。
佐久間さんは外出しているようだが、だとすればなぜ神田美咲だけがこの部屋にいるのだろうか。
「こっち、座りなさい。」
先程よりも低いトーンの声に焦り、私は神田美咲の隣へと少しの距離を開けて座った。
「はい、コーヒー。」
「…ありがとうございます。」
「あなた、俊二の何?」
「…恋人です。」
「恋人?」
神田美咲は驚いた表情を浮かべると、すぐさま口元に手を当てながら笑い出した。
しんと静まり返った部屋に、甲高い笑い声が響く。
一体何がそんなにおかしいのか。
少なくとも私は今、とても気分が悪い。