第22章 スクリーンの中で
革張りのソファーに深く腰掛け、女性はテレビのワイドショーを眺めていた。
ローテーブルに置かれたコーヒーカップ。
そのコーヒーカップは、佐久間さんがホワイトデーにプレゼントしてくれた思い出のコーヒーカップだ。
私が部屋へ入ってきた事に気付いた女性はテレビを消し、ため息をつきながらこちらを向いた。
その瞬間、私はその場に座り込んだ。
手足は震え、動揺を隠しきれない。
恋人の浮気相手と鉢合わせなど、ドラマの世界だけだと思っていた。
しかし、未だにドラマの世界なのではないかと疑ってしまう。
振り向いた女性は“神田美咲”。
私がこの部屋に住むようになってから見始めるようになった医療系のドラマ。
そのドラマでダブル主演を演じていた倉田理子と神田美咲。
その神田美咲がどうしてここに居るのだろうか…。
ここで会ったという事は…神田美咲が佐久間さんの“相手”の女性なのか。