第22章 スクリーンの中で
玄関のドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは見慣れない女性物のショートブーツだった。
ヒールが特徴的なハイブランドのショートブーツ。
広すぎる玄関に、その靴だけがポツンと脱ぎ揃えられていた。
私がいない間に…佐久間さんは女性を招き入れていたのか。
あまりにも衝撃的な光景。
呆然とその場に立ち尽くす。
まさか佐久間さんがという気持ちもあるが、目の前の現実にただ驚くばかりだ。
このまま部屋へ入っても良いのだろうか。
ここは私の住む部屋でもあるが、“相手”の女性と鉢合わせるなどまるでドラマの世界だ。
私の人生において最大の修羅場。
もし佐久間さんと抱き合っているところだったら…。
おかしな妄想はつきる事がない。
音を立てぬよう、スーツケースを壁に立て掛け靴を脱いだ。
ハイブランドのショートブーツの横に、私の履き潰したスノーブーツが並ぶ。
気後れしてしまいそうな気持ちを何とか奮い立たせ、私はリビングのドアを開けた。