第22章 スクリーンの中で
「本当に死ぬかもって思った時、村瀬先生の顔が頭に浮かんだの。」
「うん。」
「こんな事言うのはおかしいのかもしれないけど…。
村瀬先生が死ぬ時も、私の事を思い出して欲しい。
心に…私を刻んでおいて欲しい。
私も村瀬先生を心に刻んでおくから。」
「うん。」
彼女の頬からそっと手を放すと、切れ長の美しい瞳が開いた。
再び涙を蓄え始めた瞳で、彼女は力なくつぶやいた。
「私なんかが…生きてて良いのかな?」
「当たり前でしょ。」
私の声は震えていた。
彼女はふふっと小さく微笑むと、「もう少しだけ生きてみようかな。」と言った。
窓から差し込む日差しは温かく、冬の北海道とは思えぬほどだ。
そんな光を浴びて、彼女はまた寝息を立て始める。
今はゆっくり休んで欲しい。
目が覚めたら、きっと彼女はまた…大人の女性へと変わるのだと思う。