第22章 スクリーンの中で
◇◆◇
「もう少し遅かったら…」
そう言っていたのは駆け付けた救急隊員か…搬送された病院の看護師か。
彼女の自宅へは連絡をしたが、特に心配する様子も無く、「治療費は出していただけるんですよね?」と母親が語気を強めた。
紋別市内の病院。
彼女はしばらく入院する事になりそうだ。
中等度の低体温症。
後遺症も無く、命に別状が無いのが奇跡だ。
とは言え、私も一緒に入院する事になってしまったなんて…申し訳無いと思う。
点滴に繋がれた彼女が眠るベッドの隣で、私も点滴に繋がれながら天井をただ眺めていた。
ホテルをチェックアウトし、荷物を運んでくれたのは、今は亡き祖父の弟である大叔父だ。
「お前は悪い事ばっかしてっから。」と、相変わらずの浜言葉で叱られてしまったが、それも命あっての事。
この秘密の旅行が母や学校に知られてしまう事になってしまったが、私はどこか安堵の気持ちでいっぱいだった。