第22章 スクリーンの中で
オホーツクの海に漂おうとしている彼女の腕を強く引き寄せた。
冷たい身体に力はなく、私の身体へともたれかかってきた。
自分よりも大きな彼女の身体を引きずりながら、急いで岸へと向かう。
意識が朦朧としているのか。
彼女は抵抗する事無く私に従ってくれた。
彼女の長いまつ毛は白くなり、唇は紫色に染まっていた。
そんな彼女がうわ言のように震える口を開ける。
「死にたいよ。」
「駄目。」
「死なせてよ。」
「絶対に駄目。」
「どうして?」
「どうしても。」
「生きていたくないの。」
「それでも、生きなきゃいけないの。」
何とか岸にたどり着いた私は、横たわる彼女の身体にコートをかけた。
震えを通り越した身体。
冷たい風がさらに体温を奪っていく。
もう身体のどこも冷えきってしまい、彼女を温める術はない。
遠のく意識の中、コートのポケットから取り出した携帯電話で、私は救急車を呼んだ。