第22章 スクリーンの中で
村瀬先生の言う通り、彼は教師で彼女は生徒だ。
教師は生徒にとっての通過点にしか過ぎない。
生徒の思い描く未来へと導き、いつか大人になった時に生きていけるだけの知識や知恵を与えるのが教師の役目だ。
いつまでも側にいてあげる事など不可能なのだ。
しかし、彼女と村瀬先生は一線を越えた仲だ。
俗世間で言う“教師と生徒”の関係ではない。
村瀬先生が彼女との関係を解消した理由…。
彼女の日記帳に記されている通りならば、村瀬先生は自分の存在が彼女の未来への足枷になってしまう事をどうしも避けたかったのか。
自分に出来る事はここまでだと、彼女の手を離したのか。
しかし、答えは村瀬先生の心の中にしか無い。
これは私の勝手な憶測にしか過ぎないのだ。
それでも…この許されない恋にすがっていたのは、彼女ではなく村瀬先生だったような気がしてならない。
彼女が村瀬先生に居場所を求めたように、村瀬先生もまた、彼女の中に安らぎを求めていたのかもしれない。