第21章 あなたがおしえてくれたこと
土曜日の夜。
私は新宿駅にいた。
いつもよりも念入りにした化粧は、決して気分が良かったからではない。
私がまとえる唯一の“鎧”だった。
村瀬先生の恋人を見たかった。
毎週末、恋人の務め先である書店に迎えに行き、そのままデートをしている事は村瀬先生本人から聞いていた。
それを確かめるように、私は書店の向かい側にあるカフェへと通った。
いつか…
村瀬先生が恋人を迎えに来なくなる日がくるのではないか。
もし村瀬先生が恋人に別れを告げられ…ボロボロになった時は、すかさず私が抱き締めにいこう。
そんな事を考えながら、窓際の席でココアを飲んだ。