第21章 あなたがおしえてくれたこと
「ねぇ…私だって大事でしょ?」
「そうですね。」
「先生は…
私と“あの人”…どっちが大事?」
長い沈黙の後、村瀬先生は「どっちもです。」と小さくつぶやいた。
その言葉に、私はまた淡い期待をしてしまう。
いっそのこと「大事じゃない。」と言ってくれれば、私は上手に諦める事が出来たかもしれない。
「君の事が嫌いです。」
そう、嘘くらいついて欲しかった。
何て“ずるい”人。
そして…何て愛しい人。
私は村瀬先生のネクタイを引っ張り、何度も何度も唇を奪った。
何か決定的な一言があれば終わってしまうであろう私達の関係。
私はまた自分を騙し、村瀬先生を求め続けた。