第2章 高校教師
「おかわりもらってもいい?」
「あっ…はい。」
不意をつかれ、思わず声が上ずってしまった。
慌てて男から茶碗を受けとる。
「本当に美味しいよ。」と笑いながらおみそ汁を飲む男。
こちらのペースなどお構い無しだ。
しかし、不思議と不快感は無い。
それどころか、やはり男の持つ独特の雰囲気はどこか魅力的だ。
異性として…というわけではもちろんない。
男性にあまり免疫の無い私にも、男が“無害”な存在である事は分かった。
茶碗にご飯をよそい、男へと手渡す。
「ありがとう。」と言いながらこちらを見る男の瞳は、やはり“無害”そのものだ。
「いいえ。」と応え、食事を続ける。
この男なら、こうして二人きりでいても危険な事は絶対にないだろう。
「ねぇ、先生って何の教科教えてるの?」
「…え?」
「“高校教師”なんでしょ?」
前回、男に私の職業の事は話していた。
こちらも男の職業を訪ねたのだから、お互い様だと思った。
男は美容師。
私は高校教師。
お互いがお互いの職業くらいしか知らないのだ。