第21章 あなたがおしえてくれたこと
「どこの書店?」
「新宿駅の近くです。」
「新しく出来たカフェの向かい側?」
「そうですね。」
「どんな人?」
「普通の人ですよ。」
「普通って?」
「写真…見ますか?」
受け取った村瀬先生の携帯電話の画面には、幸せそうに微笑む恋人達の姿があった。
村瀬先生の言葉通り…“普通”の容姿をした女性だ。
それよりも、隣で微笑む村瀬先生の顔に驚いた。
私はこんな笑顔の村瀬先生を見た事が無い。
私は所詮…コンビニで待ち合わせをし、ドライブスルーでコーヒーを買い、人目を避けて映画を観たのちにホテルでセックスをするだけの女なのだ。
もはや村瀬先生の恋人に対する罪悪感など微塵も無かった。
いや、最初から感じた事などあっただろうか。
それすらもう分からない。
先が見えない…希望が見えない恋。
その日観た映画を…私はあまり覚えていない。