第21章 あなたがおしえてくれたこと
それでも…「映画が観たい。」と言えば、不思議と村瀬先生は私のために時間を作ってくれた。
雪がちらつきそうなほど寒い冬の夜。
コンビニで待ち合わせをし、ドライブスルーで買った温かいコーヒーを飲みながら、私達は隣の県の映画館へと向かっていた。
「先生、映画好きなの?」
「映画は好きです。」
「その…彼女とは行かないの?」
「はい。彼女とは映画の趣味が合わないので。」
「映画なんて…恋人同士で観たら何でも面白いんじゃないの?」
「そうですね。
最初はそうだったかもしれないですけど。」
「今は違うんだ?」
「はい。彼女はいつも“原作の方が面白かった”が口癖なので。」
「彼女って何してる人?」
「書店員です。」
「実は上手くいってなくて…」
そう言ってくれたなら、私はどんなに幸せだっただろう。