第21章 あなたがおしえてくれたこと
「橘先生ですか?」
「そう。仲良い?」
「職員室に友達はいませんよ。」
“観たい映画がある”とメッセージを送ると、村瀬先生は意外にもすんなりと会ってくれた。
いつものコンビニで待ち合わせをし、隣の県の映画館で映画を観て、ホテルへ。
行為が終わった後のわずかな時間。
私は橘先生の話をした。
「話した事くらいはあるでしょ?」
「えぇ、仕事ですから。」
「良い人?」
「“良い人”の定義は人それぞれなので。」
村瀬先生の言う通りではあるが、私の心情としては何か会話のきっかけにでもなればと思っていた。
橘先生と村瀬先生が仮に親しい仲であるならば、私も橘先生と親しくなりたい。
私と村瀬先生。
居心地が良かったはずの二人だけの世界は、少しずつ私の心を蝕みはじめていた。