第21章 あなたがおしえてくれたこと
次の日の放課後も、私は屋上にいた。
ここから飛び降りてしまえば…村瀬先生は私のもとへ駆け付けてくれるだろうか。
優しく抱き起こしてくれるだろうか。
「本当は君だけを愛していた。」
そう言って涙を流してくれるだろうか。
そんな事を考えていた。
しかし、そこへ現れたのは橘先生だった。
昨日没収されたタバコを返された。
全くおかしな人だと思う。
「…1本もらえる?」
「何をですか?」
「タバコ。」
「…え?」
「ダメ?」
「…ダメじゃないですけど。」
二人でタバコをふかした。
その瞬間、私の中にあった苦しいほどの想いがほんの少しだけ和らいだ気がした。
「…タバコなんて大嫌い。」
そう言いながらタバコをふかし続ける橘先生の姿は異常だったが…
「…悪い事するのって、こんなにドキドキするんだね。」
そう笑った橘先生に、どこか安らぎのような物を感じた。