第21章 あなたがおしえてくれたこと
夏休みがとても長く感じた。
物が乱雑した部屋の中、鏡を見ながらタバコをふかす。
村瀬先生に近付きたかった。
こうしていれば…離れている間も村瀬先生の匂いをまとっていられる。
約束通り、村瀬先生とは一週間後に会った。
コンビニで待ち合わせをし、ドライブスルーでコーヒーを買う。
ドライブをしてからいつものホテルへ。
私達は付き合っているのだろうか。
確認するまでも無い。
こうしてデートを重ね、セックスをするのだから。
私達は恋人同士。
そう思って疑わなかった。
「携帯電話、貸してくれますか?」
「…なんで?」
行為を終え、村瀬先生はタバコを吸いながら私の携帯電話を手に取った。
慣れた様子で電話帳を開く。
表示された名前は“5万円おじさん”だった。
村瀬先生は何も言わず、“5万円おじさん”の番号を削除した。
そして、私を強く強く抱き締めてくれた。