第21章 あなたがおしえてくれたこと
それからも、村瀬先生は度々夜のドライブに連れて行ってくれた。
コンビニにで待ち合わせをし、ドライブスルーでコーヒーを買い、高速道路を走る。
カーステレオからはYURIの歌声。
この時間だけは、全てを忘れさせてくれた。
私が見付けた、たった一つの居場所。
私にとって村瀬先生は、生きる事そのものだった。
「あの…。」
「はい。」
「ホテル…行きませんか?」
「どうしてですか?」
「したいです…村瀬先生と。」
「そうですか。」
また困らせてしまっただろうか。
村瀬先生は黙りこくってしまった。
村瀬先生と二人で会うようになってから、ネットで知り合った男達との関係は全て解消していた。
携帯電話の電話帳から名前を削除してしまえば終わる関係。
あんなにも必死でつながっていたかった関係は、意外にも簡単に手離す事が出来た。
“5万円おじさん”と村瀬先生の番号のみが登録された携帯電話。
村瀬先生に触れたい。
村瀬先生に触れられたい。
日を追うごとに、その気持ちは強くなっていた。