第21章 あなたがおしえてくれたこと
「小松さんは…今どうしたいですか?」
「私は…。」
「はい。」
「会いたいです。村瀬先生に会いたいです。」
「では…そうしましょう。」
学校から少し離れたコンビニの駐車場。
村瀬先生の青いスポーツカーに乗り、夜のドライブをした。
ドライブスルーでコーヒーを買い、高速道路を走る。
物静かな村瀬先生は、あまり多くを語らない。
カーステレオから流れる甘い歌声。
こんなにも胸がときめいたのは初めてだった。
「…誰の曲ですか?」
「YURIです。」
「YURI…?」
「これです。」
村瀬先生はダッシュボードから1枚のCDを取り出した。
薄暗い車内で見た、碧色の空と氷の大地。
髪の長い1人の女性が大きな氷を抱き抱えている姿。
その女性は愛おしそうに目を閉じ、氷を抱き締めていた。
「昔から好きなんです。
曲も歌声ももちろんですが、歌詞がとても素敵で。」
村瀬先生の声は少し笑っているように聞こえた。