第21章 あなたがおしえてくれたこと
「そうですか…。」と村瀬先生は少し考えた様子を見せると、スーツのポケットから携帯電話を取り出した。
「僕の電話番号と、メッセージのIDです。
何か分からない所があれば、その都度連絡を下さい。」
思いがけず手に入れてしまった村瀬先生の番号。
電話帳に村瀬先生の名前が並んでいるのはどこか違和感があったが、とても嬉しかったのを覚えている。
今思えば…この頃の私は既に村瀬先生が気になり初めていたのだと思う。
思いきって電話をかけたのは、夏休みが始まる前日。
終業式の夜だった。
本当に電話に出てくれるのかが気になった。
と言うのは口実だ。
「はい。村瀬です。」
「あの…小松です。」
「どうかしましたか?」
「ちょっと…。」
「はい。」
「それが…家に帰りたくないんです。」
「…そうですか。」
突然の電話に驚き、村瀬先生は黙りこくってしまった。
きっと…困らせてしまったのだと思う。