第21章 あなたがおしえてくれたこと
「今日はもう遅いのでここまでにします。」
村瀬先生はそう言ってプリントを回収した。
携帯電話を受け取り、私は急いで視聴覚室を出る。
…その日受け取った5万円は、なぜか今まで感じた事の無い後味の悪さがあった。
次の日も私は放課後の視聴覚室で英語の補習を受けた。
前日いた生徒達の姿は無く、村瀬先生と二人きり。
英単語のプリントはより簡単なものへと変わっていた。
村瀬先生は解答欄を埋める私の周りを行ったり来たりしていた。
わざわざこんな私のために時間を作ってくれた。
それが妙に嬉しかった。
ある程度終えた所で、村瀬先生は私の横に立ち、こう言った。
「何か困っている事はありませんか?」
その言葉は…私の心の奥深くに触れてくれた様な気がした。
「あの…分かりません。」
「どこがですか?」
「…全部。」
「教科書で言うと、どの辺りですか?」
「…最初からです。」
「それは困りましたね。」
「あの…教えてください。」