第20章 氷の世界で見た碧さ
土産物店の二階からもオホーツク海を望む事が出来た。
外の気温とは対象的に、汗をかく程の暖かい室内。
目の前に広がる流氷に…彼女は何を思っているのだろう。
北国の日の入りは早い。
午後4時を過ぎれば辺りは真っ暗だ。
時間の許す限り、ここに居ようと思う。
今回の旅では観光らしい事をする予定は無い。
こうしてただ氷で覆われた海を見ていると、この1年半に起きた出来事が頭を駆け巡る。
屋上で彼女と出会った事。
アパートの前で倒れている佐久間さんに出会った事。
猫を拾い、佐久間さんと同棲する事になった事。
好きな音楽が出来た事。
そして…実の父親である高杉さんに出会った事。
普段の生活を離れ、美しい風景の中にいると、自然と自分の心と対話をする事が出来る。
私がこうして過去の自分を振り返っているように、彼女もあの悲しい恋に決着をつけようとしているのかもしれない。