第20章 氷の世界で見た碧さ
私も、この旅では少し写真を撮ろうとカメラを持って来ていた。
辺り一面、雪の世界。
そこに佇む美少女。
彼女を被写体にしたいとは前々から思っていた。
彼女はしゃがみこみ、接岸している流氷に触れた。
持ち上げようと思ったのか、両手を使い抱え込む。
彼女の力じゃ到底無理だ。
「重いよ。」
「うん。」
「持ち上げたいの?」
「CDの写真では持ち上げてた。」
「もっと小さい物だよ。」
手袋を外し、大きな流氷を素手で触る彼女の後ろ姿を写真におさめた。
「中に入らない?」
「まだいる。」
「寒くないの?」
「寒いけど…まだここにいたい。」
彼女はその場にしゃがんだまま、水平線まで続く流氷を眺めている。
オホーツクの冷たい風に、美しい黒髪がなびく。
今は一人になりたいのかもしれない。
私は彼女を残し、土産物店でコーヒーを飲む事にした。