第20章 氷の世界で見た碧さ
信号が変わり、紋別市街へと車を走らせる。
センターラインの無くなった雪道をゆっくりと進む。
今夜泊まるホテルは、紋別市よりも更に30kmほどの場所にある道北の港町だ。
普段車を運転する事の無い私にとっては久しぶりの長距離運転になる。
雪道には慣れている…と言いたい所だが、正直自信は無い。
しかし、それでも彼女には見せたい風景がある。
その想いだけでハンドルを握る。
右手に流氷で覆われたオホーツク海を見ながら、私は車を走らせた続けた。
「もう少し…近くで見たい。」
「え?」
「流氷。」
「あっ、うん。」
「触りたい。」
「分かった。調べるね。」
やっと口を開いてくれてほっとした。
私はあらかじめ調べてあった流氷に最も近付けるであろうスポットをカーナビで検索する。
ここからは距離にして15km程度。
もともと今晩泊まるホテルへの通り道だ。
「きっと寒いよ。」
「…もう充分寒い。」
生まれも育ちも東京の彼女にとって、北海道の気候は過酷以外の何物でもないかもしれない。