第20章 氷の世界で見た碧さ
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飛行機から見えたオホーツクの海は、まるで陸地が続いているかのように海岸近くまで流氷が迫っていた。
「親には何て?」
「友達の家に泊まるって。
そしたら“アンタにも友達いたの?”って。」
「…そう。」
2021年2月10日。
午前10時30分に羽田空港を出発し、午後12時15分に北海道オホーツク紋別空港へと到着した。
飛行機を降りた瞬間、凍える寒さにコートのボタンを上まで留める。
彼女にとっては初めての北海道。
この旅で何か得る物があれば…。
そんな事を期待し、私達はレンタカーに乗り込む。
空港を出た先にあるT字路交差点。
赤信号で止まった車窓からも、オホーツク海を望む事が出来た。
「…この時期は流氷砕氷船が運行してるみたい。
乗る?」
助手席で遠くを眺めていた彼女にそう問いかけるが、返事は無い。
想像していた北海道の景色とは違っただろうか。
飛行機を降りてから、彼女の意識はどこか別の所にあるようだった。