第20章 氷の世界で見た碧さ
「YURIのファーストアルバム。」
「…素敵。」
「うん。
一瞬で好きになった。」
CDを大切そうに見つめる彼女の横顔を見ていると、キリキリと胸が痛んだ。
今…私が彼女に出来る事は何だろう。
今、私が彼女にしてあげられる精一杯の事は何だろうか。
「見に行く?」
「は?」
「行こうよ。北海道まで。」
「無理だよ。そんなお金無いし。」
「私が出す。」
「マジで言ってる?」
「“マジ”。」
あまりにも唐突だっただろうか。
彼女は驚いた表情を浮かべ、黙りこくってしまった。
しかし、彼女が望む事をしてあげたいと思う。
やはり、私は彼女が可愛いくて仕方ない。
彼女は…そんな私の想いを受け取ってくれるだろうか。
「…いつ?」
「テストが終わったら。」
「学校休むの?」
「2、3日サボっても問題無い。」
「先生ってさ…色々と“ヤバイ奴”だね。」
再び手元のCDへと視線を落とす彼女の横顔が、笑っているように見えた。
“ヤバイ奴”
それでも良い。
私は彼女の唯一の理解者なのだから。