第20章 氷の世界で見た碧さ
「北海道でも、オホーツク海に面した港街では毎年冬になると見られるよ。」
「先生の住んでた所は?」
「私の住んでた街は港街だけど、道南の暖かい地方だから流氷はこないよ。」
「先生は流氷見た事ある?」
「うん。小さい頃に。
祖父の親戚がオホーツクの紋別市に住んでて。
一度だけ見た事があるけど、あまり覚えていない。」
「そう。」
彼女はため息をつき、机に突っ伏してしまった。
そんなにも流氷が見たいのだろうか。
17歳の女子高生が興味を持つような物でも無い。
誰かの影響…。
それは間違いなく村瀬先生だろう。
「このCD見て。」
彼女は鞄から1枚のCDを取り出した。
いつも聴いているYURIのCDだろうか。
彼女が机に置いたそのCDのジャケット写真。
そこに写っていたのは碧色の空と氷の大地。
髪の長い1人の女性が大きな氷を抱き抱えている姿だった。
愛おしそうに目を閉じ、氷を抱き締めているこの女性がYURIか。