第20章 氷の世界で見た碧さ
「そういえば…愛美先生と年末に音楽フェスに行って来たんだけど。
“JIG”出てたよ。
ステージは見えなかったけれど、音楽は聴こえてきて。
前に好きだって言ってたよね?
カッコ良かった。」
「そう。」
「今は何を聴いていたの?」
「YURI…しか聴いてない。」
「そっか。」
村瀬先生が好きだと言っていた音楽。
それを今でも聴き続けている。
村瀬先生がこの学校を去ってから、もう6ヶ月が経とうとしていた。
それでも、彼女の心には村瀬先生が存在しているようだ。
何と…声を掛ければ良いのだろう。
いつも大切な時ほど言葉は出てこない。
「ねぇ、先生って“流氷”見た事ある?」
「え?」
「北海道には冬になると海に乗って“流氷”が来るって…村瀬先生が言ってた。」
彼女の口から“村瀬先生”という言葉を聞き、わずかに動揺してしまった。
しかし、村瀬先生…の話をしているわけではない。
今は“流氷”の話だ。