第2章 高校教師
料理を作る事に夢中だったせいか、少しぎこちない応えになってしまった。
そんな私に男は「俺、テレビっ子だからさ。」と、子供のように無邪気に笑う。
“テレビっ子”
その言葉が何だか妙に可愛いく感じた。
物心ついた頃から、私の家にテレビは無かった。
そのせいか、学生時代はまわりのクラスメイトとの話題についていけずに苦労したものだ。
それこそ、流行りのドラマなど観た事もなければ、出演している俳優の顔も名前もよく知らない。
音楽番組を観る事もないのだから、流行りの歌など分かるはずもない。
近所に住む祖父母の家にはテレビがあったのだが、ついているのをあまり見た事がない。
幼い頃に一度だけ、テレビの音楽番組が観たいと祖父母の家に押し掛けた事があったが、「今日は帰りなさい」と追い返された思い出がある。
それ以来、私はどこかテレビに対して“悪い事”というイメージがついてしまい、それを今だに払拭出来ずにいる。