第2章 高校教師
とりあえず、おみそ汁を作ろう。
その間に魚を焼く。
ついでに玉子焼きも焼いてみようか。
まるで朝食のような夕食。
こんな事になるなら、昨日スーパーで食材くらいは買い揃えておくべきだった。
「良い匂い。」
男は嬉しそうに笑った。
相変わらずクッションを大事そうに抱え、壁にもたれている。
その姿を見ていると、落ち着かない心が癒された。
マイペースではあるが、やはりこの男には人を惹き付ける不思議な何かがあるのだ。
「ねぇ、この部屋ってテレビは無いの?」
部屋を見渡しながら男はそう言った。
料理の音だけが響く静けさに気まずさを感じたのだろうか。
何か音が無いと落ち着かない人なのだろうか。
しかし男の言う通り、残念ながら私の部屋にテレビは無い。
「テレビ…無いんです。観る習慣がなくて。」
「そうなんだ。珍しいね。」
「そう…なんですかね?」
「“女子”ってテレビドラマとか好きなんじゃないの?」
「ドラマ…あまり観た事がないんです。」