第20章 氷の世界で見た碧さ
「まだ残ってたの?」
明かりのついた2年A組の教室。
数学の問題集に取り組む彼女の姿があった。
イヤホンを付け、ただ黙々と問題を解く彼女。
いつもであれば声をかけずに何度か様子を見に来るのだが、今日は少し事情が違う。
今晩から明日にかけ低気圧が発達し、都心周辺でも積雪の可能性があると、今朝のニュース番組は伝えていた。
東京で降る雪など微々たる量だろうと、北国育ちの私はいつも大げさに騒ぐメディアを冷ややかな目で見ていたが、交通機関が止まってしまうのは困る。
もしかすると、今晩あたりからみぞれが降り出すかもしれない。
彼女の横へ行き、イヤホン越しにも聞こえるようにと大きな声を出す。
「小松さん、これから天気が荒れてくるかもしれないから、今日はもう帰った方が良いよ。」
彼女は深いため息をつきながら、片耳のイヤホンを外した。
「もう少し居ちゃだめ?」
「出来れば次のバスに乗って欲しい。」