第19章 泡の魔法はもう解けた●
それならば…
愛美先生はもう気付いているのかもしれない。
私の恋人が佐久間さんである事を。
いや、そこまではさすがの愛美先生であっても不可能か。
私の恋人は年上の美容師。
それだけの情報しか愛美先生は知らない。
「今日、何曲やるかな?」
「8曲位…ですかね?」
「“strawberry”聴きたいなー。」
「今日は…最後に演奏してくれるような気がします。」
「やっぱり最後だよね。
日本を代表するロックバンドのロックンロールアンセムだからね。」
上機嫌に笑いながら、愛美先生は「楽しみ。」と子供のようにはしゃいだ。
ステージ上では機材展開が行われていた。
アイヴィーの機材が袖から運ばれ、サウンドチェックが行われる。
ローディーが鳴らす佐久間さんのギターの音さえも、私の心は熱く震えていた。
チラリと横を見ると、ステージを眺める愛美先生の横顔。
打ち明けるならば、今が良いタイミングなのかもしれない。