第19章 泡の魔法はもう解けた●
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「あの2人、付き合うと思うな。」
ステージが見える後方の席に座り、お酒を飲みながら愛美先生はそう楽しそうに笑った。
「ユカさんと…田辺先生ですか?」
「そう。絶対、お互い気になってると思う。」
「どうして分かるんですか?」
「うーん、女の勘…と、言いたいところだけど、男女が恋に落ちるにはある程度パターンがあるんだよ。」
「パターン…ですか?」
「そう。
田辺先生は今、橘先生にフラれて傷心中でしょ?」
「え?」
「隠さなくても良いよ。
私、“気付いちゃう”タイプの女だから。
そんな恋に破れた心優しい年下男子の田辺先生と、仕事大好きな姉御肌の年上女子のユカちゃん。しかも美人。
これは恋をしろって言われているようなものじゃない?」
お酒が入り、愛美先生はいつにも増して興奮気味にそう言った。
以前から愛美先生のこの類いの考察力は素晴らしいと思っていた。
よく他人を観察し、気配りや心配りを忘れない愛美先生だからこそ出来る事だと思う。