第19章 泡の魔法はもう解けた●
“私の彼氏はthe IVYのギタリスト、佐久間俊二です”
そう言ってしまえば…私の気持ちは楽になるだろう。
しかし…愛美先生に隠している事はこれだけではない。
“私の父親はthe IVYのボーカリスト、高杉誠です”
自分自身ですら受け入れる事が出来ていない…この真実。
私は一体どこまで愛美先生へと打ち明けるべきか…。
そんな私の心の中などつゆ知らず、愛美先生はサウンドチェックが進むステージをじっと見つめていた。
「…あの」
「アイヴィーの音楽で1年を迎えられるなんて感激。
あの日の自分に教えてあげたい。」
「あの日って…」
「まだ中学生だった頃の自分。
初めてアイヴィーの曲を聴いたあの日の自分。
“絶対正解!!!”って、伝えたいよ。」
じゃあ、私も伝えたい事があるんです。
「今日は最高の気分。」と、まぶしい笑顔で言った愛美先生に、そんな事は言えなかった。
【泡の魔法はもう解けた】おわり