第19章 泡の魔法はもう解けた●
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あの夜、私達はすれ違っていた時間を埋めるかのように、何度も何度も抱き合った。
疲れ果て、乱れたシーツにくるまりながら肌を寄せ合い眠る。
私達の間には揺るぎない愛がある。
そんな事を思いながら…。
その後も佐久間さんはアイヴィーのライブツアーのために家を空ける事が多かったが、不思議と充実した毎日を送れていた。
仕事に没頭し、いつ佐久間さんが帰って来ても良いように、保存がきく料理を毎日作った。
時々は愛美先生とお酒を飲みながら美味しい料理を食べた。
自宅ではバスルームで映画鑑賞をする事が日課になっていた。
時々はリビングの大きなテレビで、定額制動画配信サービスの古いドラマを観たりもした。
もちろん膝の上には気持ち良さそうに眠るコロ。
趣味のカメラも最近は良くさわるようになった。
気が付けば今年もあとわずか。
結局、今年の年末は故郷である北海道の函館市へは帰省しなかった。
『今年は仕事が忙しいので帰省出来ません。
来年の春にはまた会えるかと思います。
風邪引かないようね。』
母にはそうメールを送った。