第19章 泡の魔法はもう解けた●
真っ白な泡の下で、佐久間さんの右手が私の太ももを優しくなぞった。
私は正直…キスがしたかっただけなのだが、佐久間さんは遥かその先までをも望んでいるようだった。
後ろを振り返り、佐久間さんの顔を見つめる。
水滴で濡れた髪の毛が色気をいっそう感じさせた。
鼻先を重ね合わせ、ふふっと笑い合う。
まるで子猫がじゃれあうかのよう。
柔らかな唇を奪ったのは私の方からだった。
ほんのりと赤ワインの香りがした。
ゆっくりと舌先を佐久間さんの口内に滑り込ませる。
いつもは受け身のキスが多いが、たまには私からだって仕掛けていきたい。
佐久間さんの手が、私の濡れた頬を包み込んだ。
これが年上の男である小さなプライドのようなものなのか…。
佐久間さんは絶対に主導権を握りたがる。
佐久間さんの甘く淫らな口付けを何度ももらった。
ぬるま湯の中、お互いの濡れた髪に指を通す。
シャンプーの香りはシトラス系の香り、バスタブの泡はホワイトローズ。
それでも、佐久間さんの身体から香る甘くスパイシーな香りには敵わなかった。