第19章 泡の魔法はもう解けた●
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バスタブに浸かりながら、2人で映画を観る。
佐久間さんの脚の間に座り、後ろから伸びる腕に抱き締められた。
もう、映画の内容は頭に入ってこない。
こうして佐久間さんとお風呂に入る事は度々あったが、いつまで経っても慣れずにいる。
雨の中、立ちすくむ男性俳優。
佐久間さんの唇を首筋に感じながら、ただ画面を眺めていた。
「…懐かしい映画観てるんだね。」
「愛美先生が…好きだって言ってたんで。」
「愛美先生はロマンチストだね。」
「…そうですね。」
フフっと笑う佐久間さんの吐息が右耳に当たる。
それだけで、私の身体は熱さをまとう。
佐久間さんの手を握り、指を絡めた。
胸の鼓動が高鳴る。
先ほどまで飲んでいた赤ワインのせいにして、今日は少し甘えてみても良いだろうか…。
「もう観ないの?」
「…手を繋ぎたくなったんです。」
「それじゃあ、続きは明日にしなよ。」