第19章 泡の魔法はもう解けた●
「これは生涯に一度きりの確かな愛だ。」
何て素敵な言葉だろう。
たった4日間で芽生えた愛。
いや、そもそも時間など関係無いのか。
胸がきつくきつく締め付けられる。
赤ワインのせいか気分は良く、ほんわりと溶けてしまいそうだ。
結ばれる事が無いであろう2人の恋。
ラストシーンを観るのが怖くなってしまうほど、深く感情移入してしまった。
揺れる女性の心情。
痛いほど…私は理解出来る。
赤ワインに口を付け、バスタブの縁に置いた時だった。
脱衣室から人の気配がした。
私は慌ててバスタブの中へと潜る。
こんなにも優雅にバスルームで映画鑑賞をしていたなど、佐久間さんにはあまり知られたくなかった。
テレビを消そうとリモコンへ手を伸ばしたその瞬間、コンコンコンとバスルームのドアをノックする音がした。
「あっ…はい。」と慌てて返事をすると、曇りガラスのドアがゆっくりと開く。
「ただいま。」
「…お帰りなさい。」
火照った頬が更に熱さを増していく。
「一緒に入ろう。」
裸の佐久間さんはそう笑いながら、泡風呂に顔を埋める私の頭を撫でてくれた。