第19章 泡の魔法はもう解けた●
愛美先生が「絶対に観て。名作だから。」と言っていたアメリカの恋愛映画は、偶然にも私が生まれた年に制作・公開されたものだった。
小さな農場の主婦とカメラマンの男との恋。
もともと映画には詳しくなかったため、迷う事無くこの映画を選んだ。
もう四半世紀も前の映画。
時代背景も今とはずいぶん違っている。
しかし、すぐにその世界へと入り込む事が出来た。
優しく、もの静か。
やわらかく見えて、情熱的。
まるで出会った日の私達を見ているようだ。
バスタブに浸かる女優の姿と、今の自分が重なる。
時間が立ち、温くなってしまった泡風呂に顔を埋めた。
佐久間さんに会いたいという気持ちが抑えきれなくなりそうだった。
愛美先生の言っていた事は本当だ。
もはや帰りが待ち遠しくなるというレベルでは無い。
今は映画に集中しよう。
不朽の名作と言われるこの作品を観る事により、自分の恋愛観や“創作”に対する刺激を与えてもらえそうな気がした。
一応、私もカメラを持ち、写真を取りに出掛けるのが好き…な時期もあったからだ。