第18章 同じ数の月を見ていた
「謝らないで下さい。
僕も久々の恋でテンション上がっちゃってたんで。
でも…橘先生の恋人が高杉さんにあんなに似てるとは思わなかったです。」
「“似てる”…ですか?」
「もう、そっくりですよ。
僕も思わず“高杉さん”って呼んじゃうくらい。
それに“俺の女”なんて、本物の高杉さんみたいでゾクゾクしました。
あんな素敵な恋人がいるなら、僕も諦めがつきます。
いえ、もう清々しいほどです。」
田辺先生の新たな“勘違い”に戸惑いながらも、高杉さんと私の関係を知られずにすんだ事にそっと胸を撫で下ろした。
ただの高杉さんに似ている人だと思ってもらえた事は都合が良い。
あの日はたまたま高杉さんも普段よく着ているワッフル素材のロングTシャツを着て、髪を束ねていた。
テレビで見るthe IVYのボーカリスト、高杉誠とはかなり雰囲気が違っただろう。
私の自宅に高杉さんがいるはずなどない。
そんな田辺先生の固定観念のお陰で、私と高杉さん…そして本当の恋人である佐久間さんとの関係を知られずにすみ、本当に良かったと思う。