第18章 同じ数の月を見ていた
「ところで、愛美先生は橘先生の恋人にお会いした事はあるんですか?」
「いえ、話をした事はありますが…。」
「愛美先生、間違いなく気絶しちゃうでしょうね。
高杉さんの熱狂的なファンですから。」
「あの、それなんですけど…。
愛美先生には内緒にしておいて頂けませんか?」
「もちろんですよ。
あんな“国宝級イケメン”を紹介は出来ないですよ。
独り占めにしたいお気持ち…分かります。」
田辺先生は妙なテンションで「僕は秘密を守ります。」と鼻息を荒くした。
これで少し、愛美先生に真実を打ち明けるまでの猶予が出来た。
安心感と同時に少しの後ろめたさを感じながら、私達は喫煙室を後にする。
「あ、橘先生。」
「はい。」
「橘先生って、すごく美人です。」
「え?」
「自分では気付いていないと思いますけど。」
「それじゃあ。」と、田辺先生は職員室へと戻っていく。
初めて言われた“美人”という言葉。
職場の同僚であり、大切な男友達だと思っていた田辺先生。
また気楽に飲みに行ける日がくるようにと、心から祈るばかりだった。
【同じ数の月を見ている】おわり