第18章 同じ数の月を見ていた
田辺先生の言葉に驚き、思わずタバコの煙にむせてしまった。
なぜそんな勘違いをしたのだろう。
自己肯定感の強い人間とはそういうものなのだろうか。
「どうして…」
「橘先生は“ずるい”ですよ。」
「え?」
「その首をかしげる仕草も、じっと見つめてきたと思ったら長い瞬きをするのも。
男性に慣れていない様に見えて、いちいち可愛いんですよ。
いや、大人の女性に可愛いなんて失礼かもしれないですけど。
この間だって僕のスーツの袖を掴んだり…潤んだ瞳で“ドキドキしてくる”なんて言われたら、僕に気があると思うじゃないですか。
でももう良いんです。
僕の勘違いだって事が分かったんで。」
私の言動が…田辺先生を惑わせていた。
気にもとめていなかった私の浅はかな言動。
俯瞰で見てみれば、私はかなりのあざとい女だ。
田辺先生の勘違いは私が原因。
自分の言動が恥ずかしく思え、顔が真っ赤に染まる。
持っていたタバコを消し、深々と頭を下げた。
「…すみません。」