第18章 同じ数の月を見ていた
今は高杉さんと向き合う事はどうしても出来ない。
もう少しだけ時間が欲しい。
気持ちを整理するための時間が欲しい。
それは高杉さんも同じだろう。
先ほど、高杉さんが田辺先生に言った言葉。
「“俺の女”に何か?」
“俺の娘”ではなく“俺の女”と言った意図…。
いつか向き合わなければいけない。
そう互いに思ってはいるが…どう切り出して良いのか分からない。
今さらだが…
きっと私達はどこか性格が似ているのだと思う。
ダイニングテーブルには、カレーライスが盛り付けらた皿が置かれていた。
ホタテの入っているいつものカレー。
母の作るカレーを真似て作ってくれたのだろうか。
懐かしい匂いに胸が締め付けられる。
コートを脱ぎテーブルに着くと、一気に感情が高まった。
カレーライスを目の前に…涙が止まらない。
そんな私の姿を見て、高杉さんはふふっと笑った。
「美波はよく泣くなぁ。」
高杉さんの細長い指が私の涙をすくう。
私達は無言のまま、カレーライスを食べ続た。